ムースコール

2009年8月21日金曜日

公的オプションとヘルスケア共同組合

オバマ政権は連邦政府がスポンサーとなって運営するヘルスケアプランを各州の保険エクスチェンジを通じて提供し、民間の保険プランと競合させようとする公的オプションの支援から撤退することで、懸念の緩和を模索するのに今週の前半を費やした。

公的オプションはヘルスケア改革において最も賛否の分かれる問題となっている。反対派は、公的オプションは販促や、医療提供ネットワークとの間で償還レートを交渉する費用を負わないため、保険料を民間保険会社より低く設定することが可能なことから、それにより民間保険市場を弱体化させると主張する。しかし私は、公的プランが保険加入者を惹きつけることにおいて、必ずしも不公平に高い競争優位性を持つとは簡単に結論できないと思う。観測筋が指摘しているように、公的プランが不均衡に多数の非常に重篤な病人の加入を招き、そのためより高額な医療費を負い、特に、もし加入者の健康度によるリスク調整が、より高額な医療費をカバーするのに十分でない場合、民間保険プランよりも高い保険料の設定に直面する可能性がある。

言うまでもなく、公的プランは必ずしも反対派が主張するような民間プランに対する大きな競争的脅威にはならないかもしれない一方で、ヘルスケア改革の複雑性を説明する困難さに鑑みれば、反対派はヘルスケア改革の問題を医療の現場に対する連邦政府のさらなる侵入という単純化した図式にすることに今のところ成功している。それゆえ、新しい保険プランの提供における連邦政府が果たすかもしれない役割を超えたところへ議論を動かすため、オバマ政権は公的オプションを重要視しない方向性を探っている。

オバマ政権のこうした動きは、公的プランによる競争的圧力がなければ、民間保険会社は支出増大の抑制を強いられることがないと考える公的オプションの支持者の怒りを買っている。しかし、メディケアパートD処方箋医薬品給付プログラムにおける民間保険会社の経験は、たとえ公的オプションがなくとも、民間プラン同士の競争が価格低下の圧力として働いていることを示している。

公的オプションの代替案として、民間プランと競合する組織として非営利ヘルスケア共同組合(healthcare cooperatives)の促進が支持されている。実際、費用対効果の高い、質の高いケアの提供で知られる、シアトルを拠点としたGroup Health Cooperativeのように、成功した事例もある。問題は、こうした例は比較的稀で、共同組合をゼロから組織するには時間がかかる上、新しい共同組合が必要不可欠の加入者を集めて成功するか、地域の医療提供者との間で有利な償還レートの交渉に成功できるか、といったことには何の保証もない。
地域の民間保険市場の競合は現在、特に地方の場合、しばしば1社が独占的な位置を占めるといったように限られている。保険市場の競争の競争の欠如は、少なくとも一部に歯こういった地域における医療提供者の相対的な不足に根ざしているため、保険市場の改革により競争性をもたらそうとしても、ほとんど、またはまったく影響をもたらさないまま終わる可能性もある。いずれにしても、一部の著名な共和党員らはすでに共同組合に対しても反対の意を表明しており、ヘルスケア共同組合に賛成して、公的オプションを捨てるというのは、共和党の支持を得るための方策にはならないかもしれない。

現在の膠着状態にあってオバマ政権は、主要な共和党上院議員らの支持を得られるヘルスケア改革の方策はあるのだろうかと案じている。現時点では、ヘルスケア改革を2つの法案に分け、そのうちの1つは調整措置を利用して(8月7日「アラン・フルミンって誰?」参照)、民主党議員による51票だけで上院を通過できるという案についても話し合われている。この法案にはメディケイドの拡大や低所得給付者の健康保険料に対する補助金などといった新しい支出対策と、こうした計画の財源、またひょっとしたら公的オプションも含まれるかもしれない。上院を通過するのに、議事妨害を防ぐために60票が必要となる2番目の法案には、民間健康保険市場の改革が含まれるだろう。もちろん、オバマ政権は依然としてバウカス上院議員が上院の財政委員会において、共和党の支持を惹きつけるような、なんらかの妥協案をひねり出すことに期待しているが、妥協工作が実現しなかった場合に備えて、改革法案を押し通すための計画の準備も行っている。

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