悪魔は細部に宿る
ヘルスケア改革法案の大枠の取りまとめが目下進展している。どうやら法案には以下の要素が盛り込まれるようだ。
- 個人の健康保険加入の義務化
- メディケイドに不適格な低所得者に対する補助金支払いを伴うマサチューセッツ州のような健康保険エクスチェンジ
- 雇用主に対する従業員保険の提供または従業員一人あたりに定められた罰金支払いへの義務化(ただし小規模事業者は控除)
- おそらく範囲を狭めた公的保険を設置し、健康保険エクスチェンジにおいて民間保険と競合させる
- メディケイドと 児童保険プログラム(SCHIP)の若干の規模拡張
- 連邦政府の補助金削減を狙ったメディケア・アドバンテージのベンチマーク計算方法の修正
- メディケアにおける、成果に基づく支払い(pay-for-performance)プログラムと一括割引支払い償還配置の拡張
- メディケアでケア・コーディネーションを提供するためのプライマリケア医へのインセンティブ供与
- 「患者に対する責任の視点に立ったケアを行う組織」(Accountable Care Organizations)に対する、メディケアシステム下の代替的償還システムの試験プログラムの実施
そして、これらの連邦政府プログラムの改革に加えて、製薬業界関連では後続バイオ製品に対して新たな動きがありそうな気配もあり、またブランド薬メーカーとジェネリック薬メーカーの間で結ばれた特許侵害訴訟の和解合意において、逆支払い(reverse payments)を禁じる法案が提出される可能性もありそうだ。
もちろん、この予想は外れる可能性もある。ヘルスケア改革の予言者としてのここ7ヶ月の私の実績は取り立てて傑出しているという訳でもなく、私の予想は、風向きの移り変わりで変遷してきた。昨年11月の選挙の直後、トム・ダシュル氏の名前が保健福祉省(HHS)長官の有力候補として大きく取り上げられた時、私はダシュル氏の連邦保険理事会(Federal Health Board)を創設するというアイデアが、オバマ政権のヘルスケア改革提案に盛り込まれることはあり得まいと考えていた。しかし数週間後に、ダシュル氏がHHS長官兼ホワイトハウスのヘルス改革オフィスのディレクターに指名され、ダシュル氏と『緊急:ヘルスケア危機に関して何ができるのか(Critical: What We Can Do About the Health-Care Crisis)』 で共同執筆したジーン・ラムブリュー氏がホワイトハウスのヘルス改革オフィスの副ディレクターに指名されると、私は考えを改め、彼らの本が改革法案の青写真となって、 連邦保険理事会も大きな役割を担うのだろうと考えた。その後数週間経って、ダシュル氏が指名を辞退すると、私はまた考えを改め、すべての過程が混乱状態にあると考えた。しかし、その後まもなくして、特にバウカス上院議員とケネディ上院議員を軸にした進展の兆候、そして合意形成の動きが現れ始めた 。
今となっては、連邦保険理事会のアイデアを語るのは、「いつもニコニコ」のチャールズ・グラスリー上院議員のみだが、彼の意図は、あくまでもこのアイデアに反対の立場をとっていることを知らしめることだ。(この立場は、素晴らしいKaiser Health Newsの新ウェブサイトに先週掲載されたインタビュー記事からも明らかだ。)
ヘルスケア法案の大枠がおおよそ決まったとしても、その法案の詳細事項も重要だ。先週末、ケネディ上院議員の事務所から、米国民のヘルスケアの選択に関する法案の「草案の草案」である、the American Health Choices Actが発表された。しかし、この170ページにも及ぶ文章では、以下に記述するヘルスケア改革の2側面に単に注目したに過ぎない。その2側面とは、①健康保険の個人への義務化、および雇用主が保険を提供しない限り代わりに罰金を払う規定を伴った、保険エクスチェンジの創設(この文書内では「ゲートウェイズ(gateways)」と呼ばれている)と、②介護施設への入居あるいは訪問看護が必要になった個人に対して介護を提供する内容の、Community Living Assistance Services and Supports Act(CLASS法案)による新たな自主的保険プログラムの設置である。
ヘルスケア改革において最も不和を呼び起こす可能性のある問題の1つに、健康保険エクスチェンジにおいて民間保険と競合させる目的で公的保険を創設するかどうかの議論がある。The American Health Choices Actの草案では、HHS長官が創設し、メディケアの償還率に10%上乗せして医療提供者に償還するという「経済的に手の届く保険」について軽く触れられている。しかしこの公的保険についてはこれ以上の詳細事項は明らかにされていない。また、ケネディ上院議員の法案が財政赤字を増やさないようにするための収入源をどうするつもりなのかはまだ分からない。ヘルスケア改革は広く支持を得ているものの、こうした細部にこそ、改革への具体的提案への反論を呼び起こす火種が見え隠れしている。
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