ムースコール

2009年7月10日金曜日

長期的に見れば皆死んでしまう

オバマ大統領は保険未加入者の健康保険加入拡大に関連するより多くの財政支出は、他の部分での支出削減と場合によっては高所得者への付加税などから得られる収入によって賄われるようになるとし、同政権のヘルスケア改革が予算中立的になると公約した。
もちろん、オバマ政権は、質が高く費用効率の高い医療ケアを提供するためのインセンティブを作る保険提供システムの改革も導入したい考えだ。プライマリケア医が様々な設定において医療ケアを調整することで支払いを受けるメディケア受給者に向けた「メディカル・ホーム」の構築、支払いを一括にすることで救急処置後の調整を行ったり再入院のリスクを減らすインセンティブを病院に提供したり、プライマリケア医や専門医、病院のネットワークがメディケア受給者への医療ケアや費用に共同で責任を持つ、患者に対する責任の視点に立ったケアを行う組織(Accountable Care Organizations)の構築など、すべての案は医療の質を改善し、費用を削減する可能性を持つ。しかし、本当に実現するだろうか?このような改革をヘルスケアシステムのいたるところへ適用することの実行可能性については試されたことがない。確かに、米連邦議会予算事務局(CBO)には潜在的予算の節約、もしくはこのような改革の特徴の詳細を見積もるのに十分な証拠がない。
長期的には、こうした改革の構造は検証され、ヘルスケア・システムの全体を通じて導入されるようになり、ケアの質や効率性を報いる医療提供者へのインセンティブは、ヘルスケア支出の高騰を減少させ始めるかもしれない。しかしジョン・メイナード・ケインズの著名な言葉、「長期的に見れば我々は皆死んでしまう(In the long run, we are all dead)」が示すように、ヘルスケア・システムにおける節減が現実化するかどうかを待ち続ける余裕が我々にあるかどうかは、疑問のままだ。
たとえ議会がヘルスケア改革法案をひねり出すことに成功し、例えばメディケイドの拡大を遅らせることで、その費用支出を3、4年は行わずに済むことなどから、向こう10年の予算的な中立が望めるとしても、10年を超えたその先の予算的中立が難しいのは確実だ。しかし、こうした支出を加算したとしても、CBOは、メディケアやメディケイドがその主要な推進力となっている現在の政府の支出の軌跡は、今後維持不可能であることを明言している。先月発表されたLong-Term Budget Outlookによれば、CBOは、医師へのメディケア支出が今後削減されす、代替的最小課税制度がインフレを指標とするという現実的なシナリオにおいて、米国の赤字は増加すると予測した。


このシナリオでは、グラフが示すように、連邦赤字は2023年にはGDPの100%を超え、2030年には140%、2038年には200%に達する。メディケア・メディケイドへの支出を削減しなければ、この恐ろしいシナリオを回避する現実的な方法は増税しかない。厳しい現実との対峙は強力な支持者を退ける危険があるため、議会はこの問題を用心深く取り扱っているが、残された時間はあまりない。

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