ムースコール

2009年9月8日火曜日

さあ仕事だ

昨日のレイバー・デー(9 月7日、労働者の日)は連邦議会休会最終日であり、両院は本日から活動を再開した。休会中も仕事をしていた議員の一人は、マックス・バウカス上院議員であった。同議員は先週末、18ページに渡るヘルスケア改革法案の「大枠」を発表した。
その大まかなアウトラインは、おなじみのものである。法案は、ほとんどの米国民に対して、健康保険への加入を義務化している。州の健康保険エクスチェンジが設立され、その中で民間保険会社は個人および小規模企業向けの保険提供で競争することになり、収入が連邦貧困レベルの300%までの個人および世帯には保険加入料の援助を与え、収入が連邦貧困レベルの400%までの個人および世帯は、健康保険加入料の支払いが年収の13%を超えないようにする。(健康保険改革は)保険会社に対し、既往症を理由として保険加入を拒否することを禁じ、受給者の自己負担額に上限を設定することを要求している。またバウカス議員は、メディケイドの加入資格を、連邦貧困レベルの133%にまで拡大することを提案している。
これらの条項は、下院法案に類似したものであり、それほど議論を引き起こさないものと言える。下院法案と異なり、バウカス案には雇用者に従業員への健康保険提供を義務付ける「プレイ・オア・ペイ」条項は盛り込まれていないが、従業員が新たに設定される保険エクスチェンジを通じて加入した健康保険のための補助金を得た場合、その雇用者にフィーを課すことが定められている。
議会において共和党員や一部の保守系民主党員がヘルスケア改革で最も問題としているのは、エクスチェンジで提供される健康保険に、公的保険を含めるかどうかである。バウカス案は公的保険提供を含めていないが、エクスチェンジにおいて民間保険と競合することになる、非営利団体の健康保険協同組合の条項を含めている。
バウカス案のもう一つの新たな目玉は、ハイエンドの健康保険プランを提供する保険会社に、いわゆる消費税を課すことである。ハイエンドの保険とは、年間保険料が個人に対しては8,000ドル、世帯に対しては21,000ドルを超えるものと定義されている。ハイエンドの保険プランに課税する論理的根拠は、こういったプランは受給者を医療治療費負担から完全に遮断することになり、受給者に費用対効果の高い治療を求めるインセンティブがなくなるためとしている。この限度額を超えて保険会社が得た保険料に対し税率35%の支払いを保険会社に課すことによって、保険会社はそのコストをより高額な保険料の形で雇用者に転嫁することが予想される。よって雇用者は、そこまで手厚くない健康保険プランを提供することを選ぶかもしれず、そうなれば、自己負担が増える可能性に直面した従業員は、ヘルスケアサービスのコストに関する意識がより高くなるかもしれない。
たとえそのコストが、やがては従業員に転嫁されるとしても、雇用者よりも保険会社に税金を課す方が、政治的には、一見受けがよいように思われる。しかしそのようなハイエンドのプランを提供している雇用者や組合の中には、保険会社に頼らず保険リスクを自己で引き受けた保険を独自で提供しているところもあるが、そういった雇用者・組合も課税対象となる。さらに、保険料が高額のプランがすべて、過度な給付内容を提供しているわけではない。プランの中には、被保険者である従業員が平均的な保険受給者に比較してずっと高齢で病気がちであるがために、保険料が高額になっているものもある。
組合や公務員はこの資金調達オプションに反対かもしれないが、ヘルスケア・インフレ率を低くすることに貢献する可能性があるという長所があることも確かである。単純に高額所得者に課税するといった代替案は、収入は多くなるかもしれないが、ヘルスケア・コスト低減に何も寄与しない。
さらなる収入源を確保するために、市場占有率をベースとして幾つかの産業に属する企業に一括的な年間フィーを課すことも盛り込まれている。これには、製薬業界に23億ドル、医療機器業界に40億ドル、健康保険業界に60億ドル、臨床検査ラボに7億5,000万ドルが含まれている。製薬業界に影響があるその他の条項としては、メディケイドのリベートを23.1%に引き上げること、そしてメディケア・パートDのドーナツ・ホール内で購入された医薬品コストを製薬企業が50 % 割り引くことなどが含まれている。
バウカス法案が公的保険という選択肢を含んでいないことは、多くの民主党員の怒りを買うであろう。しかしながら、公的保険を排除した法案を発表することにより、バウカス上院議員は基本的には共和党員にはったりをかけているのだ。もし共和党員が同議員の非常に穏健なプランにさえ支持を拒むなら、同議員は、共和党員は最初から妥協案の成立に真剣ではなかったと主張するだろう。その一方で、もし共和党員が同議員の法案を受け入れたとすると、上院は超党派の支持を得て議会通過可能な法案を手中に得ることになるだろう。公的プランを含まないことは多くの下院民主党議員を遠ざけることになるかもしれないが、民主党員も共和党員も、公的プランに関しては、保険エクスチェンジで提供される選択肢に対するインパクトよりも、イデオロギー的な理由に焦点が集まっているように思われる。いずれにしても、今日・明日に渡るバウカス上院議員と上院財政委員会の主要共和党議員の折衝の結果は、水曜日夜にオバマ大統領が予定している演説に影響を与えるかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム