ムースコール

2009年11月5日木曜日

針に糸を通す

先週は、多数党院内総務ハリー・リード上院議員による上院版のヘルスケア改革法案の発表が見込まれていた。しかし今日になって、今週中の発表もないとの見方も出てきた。遅延の明確な理由は開示されていないが、法案施行のコストを抑える必要性と、現在健康保険を持たない比較的健康な中間所得層を引き付けるのに十分な価格に保険料を抑える必要性とのバランスをとるのに、同議員は苦慮していると思われる。

例えば、ボーカス法案に対する批判の一つに、中間所得層に対する保険購入のための援助が十分でないとするものがある。それは、援助を制限することが法案全体のコストを下げることに貢献しているにも関わらずである。例えば4万ドルから5万ドルの年収がある個人にとって、新たに設立される保険エクスチェンジを通じた保険加入には、年間およそ5,000ドルが必要になると見込まれている。実のところ、新法によって保険プランは既往症によって保険加入を拒否できなくなるため、病気になったとわかってから保険に加入することを防ぐものは何もない。そのため、保険加入のインセンティブは殆ど無いと米国民が感じる可能性がある。

個人の保険加入を義務化して保険に加入しない個人に高額のペナルティを課すことは、「タダ乗り」問題を回避できるかもしれないが、連邦議会の民主党リーダー等は、保険に加入しない中間所得層に高額ペナルティを課すことには消極的である。とりわけ、保険が経済的に容易に加入できるものとみなされない場合は、ペナルティ設定には躊躇するだろう。高額ペナルティは政治的に不人気ともなる。しかしながら低額のペナルティは、保険加入のインセンティブとして十分なものとはならないだろう。

一つの可能性として、現在保険に加入していない、比較的若く健康なアメリカ人は、保険エクスチェンジに加入しないことになるかもしれない。そして、保険プールはヘルスケアコストがより高額な、比較的不健康なアメリカ人によって形成されることになり、結果として平均保険料を押し上げることになるだろう。平均保険料の上昇に従って、保険エクスチェンジに参加するアメリカ人は、さらに少なくなるかもしれない。

このような事態を回避するために、リード上院議員は個人保険加入義務化に関する援助とペナルティの程よいバランスをとり、それを法案施行の全体コストを抑えながら実現する必要がある。これはまさしく、糸を通すのがとても難しい針といえるだろう。

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